角膜創傷治癒
以下の順で角膜創傷の治療について概説する
①角膜上皮の創傷治癒
a)角膜中央部の上皮欠損の修復
b)全角膜上皮欠損
②角膜実質の創傷治癒
③角膜内皮の創傷治癒
①角膜上皮の創傷治癒
a)角膜中央部の上皮欠損の修復
・周囲の上皮細胞の伸展・移動( 欠損部表層にフィブロネクチンが出現、そこへ上皮細胞が伸展・ 移動)
→細胞増殖・細胞分化が起こる( 欠損部が被覆されると上皮基底細胞の分裂増殖)
※ときに上皮欠損が遅い【遷延性角膜上皮欠損】 をきたすことがある。
※【遷延性角膜上皮欠損】をきたす症例
1.角膜知覚低下:角膜移植術後、角膜ヘルペス、 神経麻痺性角膜症、DM
2.輪部幹細胞疲弊症:熱傷・化学腐食、放射線角膜症、SJS、 眼類天疱瘡
3.重症ドライアイ
b)全角膜上皮欠損
Ⅰ.輪部上皮健在
・輪部上皮が欠損部を修復する
→like 上皮細胞
Ⅱ.輪部上皮不健在
・結膜上皮が欠損部を修復する
→not like 上皮細胞
さらに、輪部幹細胞疲弊症
i.Bowman膜障害あり or 実質に血管侵入あり
→再生上皮は結膜上皮のphenotyapeを保持して角膜上に
→眼表面再建術が必要になる場合も
ii.Bowman膜障害なし
→結膜上皮の角膜上皮化生が起こり、再生上皮は透明化
※輪部上皮の役割
1.幹細胞の存在
2.結膜上皮の角膜への侵入を防ぐバリア
②角膜実質の創傷治癒
・アポトーシス後死す
・角膜上皮再生に伴い、 上皮下に繊維芽細胞様に活性化した角膜実質細胞が創周辺部から郵 送・集簇し、活発な分裂・増殖を開始する。
・活性化した角膜実質細胞は、 コラーゲンをはじめとする細胞外マトリックスを産生し、 実質組織が再生されていく
・瘢痕は残る
③角膜内皮の創傷治癒
・隣接する細胞が拡大、移動して欠損部を被覆する
→減少した細胞数は増加しない