とある眼科医のつぶやき

とある眼科医は日頃の診療で患者さんから質問されることに答えたり、眼に関する役立つ知識を提供します。

眼の色であなたの生まれ故郷がわかる?

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皆さん、おはようございます。ドクターKです。

 

最近、海外旅行に行く機会もあり、ちまたにも外国人さんの方も増えてきましたよね。外国の方の眼は青くてきれいだな~と思って、なんで眼の色が違うんだ?遺伝だろうけど、それを調べた研究ってあるのかな?

 

と思ったので、科学的根拠を求めて調べていると…

 

2018年3月に公開されたDiana Maria Hohlら著の

『Genetic and phenotypic variability of iris color in Buenos Aires population』

という論文を見つけたので紹介します。(マニアックすぎて、一般の方にはわかりにくかったらごめんなさい・・・分かりにくかったら最後のところの僕の感想だけ読んでみてください!)

 

この論文の目的は2つあって、

 

①アルゼンチンのブエノスアイレス州の人口構成に対して、虹彩の色にまつわる表現型および遺伝子型の差を述べること。

②アルゼンチンの人に対して現在の分析方法の有用性を評価すること。

 

としています。

 

そもそも、ヨーロッパ人で同じような研究はされていたみたいですが、それが他の人口分布の人でも当てはまるのだろうかというのが背景にはあるみたいです。

 

あ、ちなみにブエノスアイレス州はここ↓です。

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さて、この目的の結果を理解するために、細かく論文を見ていくと、

 

研究対象数:118人(18歳~50歳までの女性69人、男性49人)

→そんなに多くないかな?

 

調べた遺伝子:5つのSNPs(HERC2、IRF4、SLC24A4、SLC45A2、TYR の5つがあって、IrisPlexというキットを用いたよう。)

→うーんと・・・虹彩にかかわる遺伝子は5つあり、便利なキットがありますね。

 

使用した分析方法:Digital Iris Analysis Tool(DIAT)

→デジタルで虹彩の分析を行うことができるツール(直訳)

 

使用したわけ:この眼は青、緑、茶色みたいにもともと定性的な分析をしていた。これでは再現性や微妙な差異を表現するには妨げとなるから、定量的な分析を行った方が良い。それがDIATを用いた分析方法で、青と茶色のピクセルをカウントすることで、a Pixel Index of the Eye (PIE-score、Score のrangeは-1~+1)を計算し定量化してくれる。

ということです。

 

結果・・・遺伝子を扱う論文を読み慣れていないと難しいです。

 

①PIE-scoreは-1(=茶色の眼)が多く、ちょうど60人。

②ほとんど、ハーディー・ワインベルクの法則※1に合致したけど、茶色の虹彩をした中にはHERC2 rs12913832がハーディー・ワインベルクの法則に合わなかった人がいるみたい。

③Fst値*2を調べてみると、ブエノスアイレス州の人口はアフリカと遠く、アメリカ人と近いらしい。

 

*1;ハーディー・ワインベルクの法則:遺伝学の法則の一つです。内容をここで説明すると、ブログ一記事分になってしまうくらい奥が深い記事です。Youtubeに基本的な内容を説明しているものがありましたので、こちらを参照してみてください。

ハーディ・ワインベルグの法則 【高校生物】 - YouTube

*2;Fst値:この値が小さいと1に近いほど集団間の分化が見られ,0に近いほど集団の構成が似ていることを表しています。

 

考察に移ります。

結果を踏まえて、著者が考察している内容はざっくりこんな感じです。

 

ブエノスアイレス州の人口構成は65% European, 31% Native American and 4% Africanとされており、今回の研究では茶色の眼が80.2%を占めていました。茶色の眼はアフリカ系などに多く、ヨーロッパ人は遺伝的に青色眼であることが多いため一見矛盾しているように見えます。

 

しかし、アルゼンチンにはスペインやイタリアなど青い眼の割合が少ないヨーロッパ地域から来ているため矛盾はしていない。だから、ヨーロッパで用いられていた分析方法などを適応するのは注意深く行う必要がある。

 

以上になります。

 

今回はブログというより、ちょっと専門的な内容を紹介させていただきました。眼の色を調べるだけで、その地域の人がどの民族由来などが分かるのは非常に興味深いですよね。

 

ラテン系の民族は茶色の眼を持つと知っている方もいるかもしれませんが、それが科学的に証明された論文を紹介しました。

 

今度、アルゼンチンに行く機会があったら、本当に眼が茶色いのかどうか見てみようと思います。読者の方でアルゼンチンに行く予定がある人は本当にそうなのか確かめてきてください!

 

なーんて(笑)

 

それではまた次のブログで会いましょう~

 

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