とある眼科医のつぶやき

とある眼科医は日頃の診療で患者さんから質問されることに答えたり、眼に関する役立つ知識を提供します。

白内障って怖い病気?

皆さん、おはようございます。ドクターKです。

 

最近、高齢化が進んでいるというニュースが盛んに発信されていますが、私の勤めている病院の患者さんも高齢化が顕著になってきています。それに伴い、白内障の手術件数も増えてきています。そんな中、意外と皆さんが知らないということで、白内障についてのブログを書きたいと思います。

 

 

目次

1.白内障ってどんな状態?

2.白内障の原因や症状は?

3.白内障の治療概要f:id:eye-doctorK:20180920091616j:plain

 

以上の3つのテーマに絞って説明します。

 

1.白内障ってどんな状態?

白内障という病気を説明する前に、まずは私たちがものをどのように見えるかを説明したいと思います。

 

私たちの眼は光が角膜→前房→水晶体→硝子体→網膜を通り、最終的に脳で光の性質などを理解します。この経路にある水晶体、カメラでいうレンズ部分が濁ってくる病気を白内障と言います。

 

カメラのレンズが白く汚れてくると鮮明な写真が撮影できないのと同じで、人間の水晶体も白く汚れてくると視界がぼやけた印象になってしまいます。

 

初期の水晶体の濁りを含めると、早い方は50歳代から発症し、80歳以上になると100%の方が水晶体は濁っています。もちろん、多少の濁りであれば必ず視力低下を引き起こすわけではありません。

 

とはいっても、視力低下などの症状が出てくるような、中程度以上の濁りを持つ方は70歳代で約半数、80歳以上では70〜80%の方に認められるというデータもあります[i]

 

2.白内障の原因や症状は?

白内障がどんな状態であるかは前章である程度理解していただけたかと思います。

 

では、どうして白内障になるのか。主な原因は加齢によるもので、加齢による白内障は老人性白内障と言います。カメラのレンズも長年使っていると段々と傷が付いてきたり、汚れが付着したりしますよね。そんなイメージで構いません。

 

その他にも、眼の怪我(外傷)やステロイド、糖尿病、生まれつき(先天性白内障)など原因は多岐に渡ります。特に、50歳未満で白内障が進行している方は加齢による影響は考えづらいため、これらの原因かな?と考えていきます。

 

 

3.白内障の治療あれこれ

白内障の治療は大きく

1)薬

2)手術

に分けられます。順を追ってみていきましょう。

 

まず、1つ薬による治療ですが、これは目薬による治療です。僕はカリーユニ点眼液0.005%[ii]という目薬を処方していますが、これはあくまで初期の治療です。

 

カリーユニ点眼液0.005%などの点眼薬による治療は、あくまで水晶体が白く濁るのを遅らせるだけであり、白内障を治療・完治させるものではありません。手術を希望されない方で、何もしないのは不安だという方によく用いています。

 

2つ目は手術です。

 

こちらは読者の方もご存知の方も多いかと思いますが説明していきます。

 

白内障の原因は水晶体の濁りですから、水晶体を取れば症状は改善します。現在、多くの施設で行われているのが、“超音波”を用いて水晶体を壊す手術が主流です。これを超音波乳化吸引術と言います。しかし、水晶体を取り出すと、前述の経路が成り立たなくなるわけですから、水晶体の代わりとなるものを眼に入れる必要があります。

 

そこで開発されたのが眼内レンズという、水晶体の代わりをしてくれる人工レンズです。これを水晶体があった位置に入れることで経路が元通りとなります。

 

現在、この2つの過程を組み合わせて行われる手術が一般的で、多くの施設で行われています。この他にも水晶体嚢外摘出術、水晶体嚢内摘出術などの治療法もあります。これらの内容については内容が専門的になりすぎますので、またの機会に別のブログ記事で紹介したいと思います。

 

~オマケ~

白内障の手術で使われる眼内レンズ、以前は単焦点レンズという焦点が一か所にしか集まらないレンズしかありませんでした。どういうことかというと、遠くのものはよく見えるけど近くは見えづらい。あるいは、その逆で近くの者はよく見えるけど遠くは見えづらい。

 

そういった欠点があるため、手術後に眼鏡を作り直し、遠くのものがはよく見える方は近くに焦点が合う眼鏡を作るなどの工夫必要となります。

 

しかし、最近では多焦点レンズという製品も開発されてきていますので、そういった欠点は解消されてきています。とはいえ多焦点レンズは保険適応外であるため自費になるため費用がかかるのが欠点です。

~オマケ終~

 

 

いかがでしたか?

 

白内障について少し理解を深めることができましたか?この内容は白内障手術前に自分が患者さんに説明する内容を文章化したものです。ですから、少し簡略化して説明しているところもあります。

 

今後、高齢化が進んでいく時代に突入し、人生100年時代という言葉も出てきています。定年退職が65歳とはなっていますが、今後は70歳、75歳と定年する年齢が上がっていくかもしれません。

 

それに伴って、白内障になる患者さんの絶対数は増えていくことでしょう。そのためには白内障について理解を深め、なるべく早い段階で気付くことが重要です。このブログで一人でも多くの方にお役に立てれば幸いです。

 

なお、白内障について、さらに詳しい内容を知りたい方は日本眼科学会のHPをご覧ください。専門の先生が書いているため、少し内容が難しい箇所もあるかと思います。どうしても分からない、記事にしてほしいなどの要望がございましたら、ブログにコメントしていただくか、僕のTwitter@doctorK)にDMをしていただければと思います。

 

それでは、また明日!

 

※本記事は日本眼科学会サイトを、一般の方に分かりやすく要約およびコメントを入れた記事です。非常に信頼を置いているサイトではございますが、科学的根拠に乏しいおよび更新されたものは見つけ次第訂正あるいは補足説明を加えます。もしも読者の方も見つけた際はコメントではなく、直接問い合わせいただけると幸いです。

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※画像は

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より引用しています。

 

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白内障 

 

 

[i] 公益財団法人日本医療機能評価機構Webサイト「Mindsガイドラインライブラリ」より

https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0012/G0000028/0021

[ii]カリーユニ点眼液0.005% pmdaサイト

http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/1319706Q3035_1_05/