とある眼科医のつぶやき

とある眼科医は日頃の診療で患者さんから質問されることに答えたり、眼に関する役立つ知識を提供します。

加齢黄斑変性症って何?

皆さん、こんばんは。ドクターKです。

 

アマゾンや楽天などの急成長で、ネットで買い物をする方が増えています。それに伴ってネット経由で、眼に良いとされるサプリメントや食品などを購入する方も増えています。

 

その中にはよく、「白内障加齢黄斑変性症を予防する⁉」などのうたい文句を掲げる商品も中にはあります。でも、白内障ってどんな病気?加齢黄斑変性症ってどんな病気?と疑問に持つ方もいらっしゃるかと思います。

 

そこで、今回このブログでは加齢黄斑変性症についてのブログを書きたいと思います。

 

目次

1.加齢黄斑変性症ってどんな状態?

2.加齢黄斑変性症の原因や症状は?

3.加齢黄斑変性症の治療あれこれ

 

以上の3つのテーマに絞って説明します。

 

なお、白内障について知りたい方は僕のブログ「白内障って怖い病気?」を参考にしてみてください!

 

1.加齢黄斑変性症ってどんな状態?

加齢黄斑変性症という病気は病気の名前にあるように、「加齢」に伴い、「黄斑」が「変性」することで症状が出てくる病気です。と言ってもあまりイメージが湧きませんよね(笑)

 

「加齢に伴って」ってことは白内障と同じで、80歳以上の人のほとんどがなるのかな?

 

という訳ではありません。統計データによって多少のばらつきはありますが、50歳以上の約1%[i]の方が加齢黄斑変性症になるといわれています。

 

平成28年度の50歳以上の人口が5820万人[ii]ほどですから、全国で約58万人近くの方が加齢黄斑変性症であると考えられます。多いのか、少ないのかは正直微妙ですが、日本での失明原因の第4位であることを考えると、それほど少なくないのかもしれません。

 

次に、「黄斑」という場所ですが、これは光の情報を受け取る、“網膜”の中心に位置しています。つまり、この黄斑が変性してしまうと、この網膜の中心に写る映像が鮮明ではなくなったり、最悪の場合は見えなくなってしまいます。

 

このような病態を示すのが加齢黄斑変性症です。次章でより詳しく原因や症状を説明していきます。

 

 

2.加齢黄斑変性症の原因や症状は?

この章では加齢黄斑変性症の原因や症状について説明しますが、基本的な内容は前章で説明しましたので、1章が理解できていない方はまだこの章を読まないでくださいね。理解した方から読み始めて下さい。

 

加齢黄斑変性症は加齢に伴って発症しますが、加齢によって何が変化してくるのか。それは網膜(特に黄斑)を形成している網膜色素上皮の下に、加齢に伴って増加する老廃物などが蓄積します。それによって直接あるいは間接的に網膜あるいは黄斑が障害されるため症状が出てきます。

 

では、加齢黄斑変性症の症状は何か。これについて説明します。

 

加齢黄斑変性症の症状は大きく、

・物がゆがんで見える「変視症

・視野の中心が見えづらくなる「中心暗点

視力低下

色覚異常

などがあります。

 

加齢黄斑変性症では網膜の一部に老廃物が溜まることで症状が出現します。その溜まり方によって、物がゆがんで見えたり、視力が下がったりします。また、色を見分けるために重要な細胞も存在しますので、そこに覆いかぶさるように老廃物が蓄積すれば色も認識しづらくなる「色覚異常」という状態になることがあります。

 

裏を返せば、こういう症状が出た方は加齢黄斑変性症の可能性もありますので、気のせいだとは思わず、一度眼科を受診するのをお勧めします。

 

3.加齢黄斑変性症の治療あれこれ

さて、加齢黄斑変性症の治療ですが、以前は有効な治療方法がありませんでした。しかし、医療技術の進歩により、あるタイプの加齢黄斑変性症に対して有効な治療方法が開発されてきましたので、その方法を紹介していきます。

 

現在、主に行われている治療は

①VEGF阻害薬を使った治療

②光線力学的療法

の2つです。

 

それでは、順に説明していきます。

①VEGF阻害薬を使った治療

僕が勤務している病院では、主に①のVEGF阻害薬を使った治療を起っています。VEGFとは血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor)の略です。加齢黄斑変性症のタイプによっては、血管が新しくできてしまって、それが原因で症状を呈するものがあります。

 

その血管が新しくできることを血管新生と言いますが、この血管新生に関わるのがVEGFという物質です。このVEGFを阻害する。つまり、血管新生を止めることで、加齢黄斑変性症の症状が改善することを目的としたのが、このVEGF阻害薬という薬剤になります。

 

具体的な製品名としては、ルセンティス®やアイリーア®などがあり、僕が勤務する病院ではこの2種類を使い分けています。

 

ただ、これらの薬を一回投与したら加齢黄斑変性症が治るかというとそうではなく、定期的に受診することが必要で、再発しているなら再び薬を投与することになります。

 

②光線力学的療法(PDT:photodynamic therapy)

光線力学的療法は僕の病院では行われていないのですが、ビスダイン®という物質を血管内に入れ、その後、専用のレーザーを病変部位に当てる治療です。

 

このビスダイン®は光感受性物質であるため、レーザーを当てたところの新生血管が退縮して治療効果を得られる治療方法です。この治療も再発する可能性もありますし、眼科PDTという資格を持っていないとできないためできる施設も限られてきます。

 

その他にも、レーザー凝固や手術による治療も昔は行われていたようですが、①②の治療成績には劣るためこの記事では簡略化のため割愛させていただきます。

 

 

加齢黄斑変性症の治療は発症すると完治するのは難しく、定期的に眼科を受診し、必要であれば再度治療をする必要があります。また、中には有効な治療がないタイプの加齢黄斑変性症も存在しますので、今後の研究が期待されている分野でもあります。

 

 

いかがでしたでしょうか?

 

加齢黄斑変性症というフレーズをよくサプリメントのサイトや広告で目にしますが、あまりよく説明されていないのも事実です。この記事が少しでも読者の方々の役に立てられれば幸いです。

 

近いうち、この加齢黄斑変性症に有効なサプリメントや食材などをまとめた記事も作成したいと考えていますので、その時はまたご報告します。

 

なお、加齢黄斑変性症について、さらに詳しい内容を知りたい方は日本眼科学会のHPをご覧ください。専門の先生が書いているため、少し内容が難しい箇所もあるかと思います。どうしても分からない、記事にしてほしいなどの要望がございましたら、ブログにコメントしていただくか、僕のTwitter@doctorK)にDMをしていただければと思います。

 

※本記事は日本眼科学会サイトを、一般の方に分かりやすく要約およびコメントを入れた記事です。非常に信頼を置いているサイトではございますが、科学的根拠に乏しいおよび更新されたものは見つけ次第訂正あるいは補足説明を加えます。もしも読者の方も見つけた際はコメントではなく、直接問い合わせいただけると幸いです。

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※画像は

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より引用しています。

 

#眼科医

#ブログ

加齢黄斑変性

 

 

[i] 日本眼科学会HP加齢黄斑変性症より引用

http://www.nichigan.or.jp/public/disease/momaku_karei.jsp

[ii] 厚生労働省総務省統計局HPより引用

http://www.stat.go.jp/data/nihon/02.html