とある眼科医のつぶやき

とある眼科医は日頃の診療で患者さんから質問されることに答えたり、眼に関する役立つ知識を提供します。

悪性緑内障

悪性緑内障についてまとめ

 

【病態】

・内眼術後合併症で、極端な浅前房+高眼圧


【概論】

・縮瞳薬で増悪し、調整麻痺・散瞳薬によって軽快する


【臨床所見】

虹彩の裏面に房水貯留はみられず、 毛様体や水晶体が前方移動し虹彩裏面に押し付けられている。


【誘因】

・閉塞隅角緑内障に対する観血的手術後早期

・遠視眼、緑内障発作既往眼に起こりやすい

・濾過手術、 周辺虹彩切除術のみならずレーザー虹彩切開術後にも起こりうる。

白内障手術、網膜復位術、 硝子体手術あるいはレーザー毛様体破壊術後にも起こりうる

・縮瞳薬点眼も誘因となる


【発症メカニズム】

・房水が硝子体腔内に蓄積( これは房水産生の場である毛様体上皮と前部硝子体膜が接すること で起こる)→後房圧が上昇→虹彩-水晶体or虹彩- 硝子体隔壁の前方移動が生じて浅前房となり隅角の閉塞が起こる


【鑑別】

瞳孔ブロック:高眼圧、浅前房だが、 悪性緑内障は前房中央も極端に浅くなり、 周辺虹彩切除眼にも起こる。

脈絡膜剥離:浅前房だが低眼圧。しかし、 出血性脈絡膜剥離では高眼圧になりうる。


【治療】

薬物療法:アトロピン点眼、 β遮断薬点眼と炭酸脱水素酵素点眼or内服

ピロカルピンは縮瞳させ、水晶体の前方移動を助長するので禁忌

・手術療法:薬物だめなとき。

無水晶体眼や偽水晶体眼ではNd- YAGレーザーによって後嚢や前部硝子体膜を切開し、 前房への房水の流路を再建する。

レーザー治療は、周辺虹彩切開部から行うことが出来る。

レーザー治療が奏功しない、 有水晶体眼なら硝子体手術で周辺部硝子体と前部硝子体膜を十分に 廓清し、前房への優路を確保する。